2022年2月に日本公認会計士協会より「ソフトウェア制作費等に係る会計処理及び開示に関する研究資料 ~DX環境下におけるソフトウェア関連取引への対応~」(公開草案)(以下、「本草案」)が公表されました。
1. 現状
現状は「自社利用目的」と「市場販売目的」に沿ってソフトウェアを区分することになっていますが、サービス・配信方法の多様化により、その区分分けが徐々に難しくなってきており、研究開発費に付属しているようなソフトウェアの会計基準は現状に合っていないといわれたものでしたが、1999年に公表された「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」以降、抜本的に見直されることはありませんでした。
昨今においては、いわゆるクラウドコンピューティングが進みSaaS(Software as a Service)などの新しい提供形態が一般化し、またソフトウェアの開発・更新についても従来と異なりいわゆるアジャイル開発のように機能単位での開発・更新を行うこと等も多くなっていることが背景となっています。
2. 実務上の課題
本草案では以下の5点が具体的な課題として列挙されています。
- 市場販売目的ソフトウェアと自社利用ソフトウェアの区分
- ソフトウェアの区分に基づく会計処理の相違による問題点
- ソフトウェア制作費の資産計上要件
- クラウドを通じてソフトウェアを利用するサービスを受ける場合の処理
- デジタルゲーム・ソフトウェアの制作費
例えば、「デジタルゲーム・ソフトウェアの制作費」では、Appゲームのようなオンラインを通じてゲームサービスを提供するサービスの場合、クラウドサービスのベンダーと同様に、市場販売目的のソフトウェアと自社利用のソフトウェアのいずれに区分して処理するのが実態に合うのか考え方を明確にする必要性 が指摘されています。
個人的には、消費者への配布手段がインターネットの発達より従来のパッケージソフトからデジタルに変わっただけであり、またパッケージソフトであっても更新や追加コンテンツの配信等の継続的なサービスが一般化され、そして配信期間も3年に満たないサービスが大半である現状においては、本質的には市場販売目的のソフトウェアに区分されるべきケースが多いのではないかと思います。
いずれにしましても、ディベロッパー・ユーザーともに実態に合った見直しが期待されます。
税理士 三木孝夫