令和3年度税制改正:クラウドを通じてサービス提供を行うソフトウェアの研究開発を試験研究費の対象に追加

令和3年度税制改正における法人課税関係の改正では、研究開発税制に係る「試験研究費の額の範囲の拡充」や「総額型・中小企業技術基盤強化税制の税額控除率と控除上限額の見直し」等が行われることになっております。今回は、そのうち「試験研究費の額」の範囲の改正について記載致します。

I.「試験研究費の額」の範囲

研究開発税制における「試験研究費の額」の範囲に、「試験研究費のうち、研究開発として損金経理をした金額で非試験研究用資産の取得価格に含まれるもの」が追加されました。

具体的には、クラウド環境で提供するソフトウェアなどの自社利用ソフトウェアの取得価格を構成する試験研究に要した費用が念頭に置かれています。

II. 現行の処理方法

市場販売用目的のソフトウェアに係る研究開発費は、一般的に、研究開発税制の対象となる「試験研究費の額」に該当します。他方、自社利用ソフトウェアに係る研究開発費はmそのソフトウェアの利用により将来の収益獲得等にならないことが明らかなものを除き、ソフトウェアとして資産計上することになります。従って、現行の「試験研究費の額」は、所得金額の計算上、損金の額に算入されるもの、とされているため、資産計上される自社利用ソフトウェアに係る試験研究費は損金算入要件を満たさず、その結果、「試験研究費の額」に該当しないことになっています。税務上は、この研究開発費をソフトウェアとして資産計上し、完成後に償却費として処理することになります。

III. 税会不一致の問題解消にはならず!?

今回の改正では、税会不一致となっている自社利用ソフトウェアに係る研究開発費について、「企業会計上、研究開発費として損金経理(費用処理)した金額で、税務上、自社利用ソフトウェアとして資産計上されるもの」が「試験研究費の額」の範囲に追加され、研究開発税制の対象になるものの、実務で負担となっていた自社利用ソフトウェアの支出時損金算入までは実現されなかったことになります。。。

とはいえ、以前から問題視されていたパッケージソフトとクラウド・アプリ等との収益モデル(または販売方法等)の違いで試験研究費の対象有無が異なるという問題が解消されたため、少し前進というところでしょうか。

税理士 三木孝夫

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