外国関係会社が連結納税制度を適用しているケースでは、連結子法人である外国関係会社には実際に納付すべき法人税が生じない一方で、連結親法人である外国関係会社には納付すべき法人税はあるものの連結グループ全体の連結所得に対するものとなることから、『タックスヘイブン対策税制(CFC税制)上の租税負担割合や現地法令基準での基準所得金額等をどのように算定すべきか』という問題がありました。
(また外国関係会社が、いわゆるパススルー課税(構成員課税・株主課税)を適用している場合も同様でした。)
そこで令和元年度改正において法的な整備が行われ、外国関係会社が、所在地国の連結納税規定やパススルー課税規定など、「企業集団等所得課税規定」を適用している場合、租税負担割合、適用対象金額及び外国税額控除の計算に当たっては、連結納税規定及びパススルー課税規定の適用はないものとして計算することとされました。
連結納税規定等が適用される外国関係会社の適用対象金額等の計算方法等の改正に関するQ&A
そこで国税庁は7月に上記の改正に関するQ&Aを公表しました。
企業集団等所得課税規定に該当する場合の「所得金額」「納税額」の計算方法
米国の連結納税制度やパススルー課税など企業集団等所得課税規定に該当する場合の外国関係法人に対するCFC税制上の所得金額/所得金額は、その外国関係法人の属する連結納税グループの所得金額/納税額又はパススルー課税として当該外国関係会社の株主に帰属するとして計算された所得金額/納税額ではなく、それらの規定を適用しないものとして計算された当該外国法人の所得金額とそれに対して課せられた法人所得税が納税額となります。
英国のグループ・リリーフとドイツのオルガンシャフトはCFC税制の連結納税に該当せず
上記のとおり米国の連結納税制度やパススルー課税は企業集団等所得課税規定に該当する一方で、本Q&AのQ1「企業集団等所得課税規定の範囲」において、英国のグループ・リリーフやドイツのオルガンシャフトは、その企業集団に属する一の外国法人のみがその法人所得税に係る納税申告書に相当する申告書を提出する旨の要件が設けられているので、個々のメンバーが申告書を提出することとされていることを理由に企業集団等所得課税規定には該当しないことが明記されており、CFC税制上の所得金額/納税額は英国のグループ・リリーフやドイツのオルガンシャフトを適用した後の金額となります。
なお平成28年度のKPMG税理士法人による経産省委託調査レポート「産業経済研究委託事業(事業再編関連制度及び実態等に関する調査)調査報告書」によると、英国とドイツにおける連結納税グループの概念は以下のとおりです。
- 英国における連結納税グループの概念
英国税務上、連結納税グループの概念は存在しない。そのため、各法人がそれぞれ課税を受けることとなる。但し、グループリリーフという制度により、同じ課税年度に発生した関連会社間の課税所得と損失が相殺可能となる。グループリリーフが適用可能となるのは、親会社が子会社の普通株式を直接又は間接に75%以上保有している場合(75%子会社)をいう。また、75%子会社の50%超の経済的利益は親会社に分配され、清算分配の際には 75%子会社の資産の50%超の資産が親会社に分配される関連会社間にのみグループリリーフが適用される。英国非居住者である法人もグループリリーフのメンバーとなることが可能である。 - ドイツにおける連結納税グループの概念
ドイツ税務上、連結納税グループの概念は存在しない。但し、オルガンシャフト(Organschaft)という制度により、同じ課税年度に発生した関連会社間の課税所得と損失が相殺可能となる。オルガンシャフトは、子会社の損益を親会社に全て集約し親会社レベルで課税することを誓約する契約書に基づいて最低5 年間適用される。また、親会社は子会社の議決権を50%超保有していなければならない。
税理士 三木 孝夫