最近、海外子会社を買収したクライアント様とのミーティングにて外国子会社配当益金不算入制度をディスカッションする機会がございましたが、ちょうど本制度の適用対象となる25%のトリガーに関する公開裁決(平成30年12月14日裁決)が公表されましたので、ご紹介いたします。
外国子会社配当益金不算入の失敗事例
本件は「株式の金額」が25%以上であるとして外国子会社配当益金不算入を適用したが、外国子会社に該当しないとして課税を受けた事例です。
この外国子会社は組織再編(合併)を経ていることから、株式の保有/出資割合と株式の金額割合とは異なっていたようです。
本制度の適用対象となる外国法人は、次に掲げる割合のいずれか25%以上となります(法令22条の4①)
① その外国法人の発行済株式等のうちにその内国法人が保有している株式又は出資の数又は金額の占める割合
② その外国法人の発行済株式等のうちの議決権のある株式又は出資の数又は金額のうちにその内国法人が保有している株式又は出資の数又は金額の占める割合
たすき掛けの法令から「株式の金額」を読み取れるか
上記法令が「株式又は出資の数又は金額の占める割合」というたすき掛けになっていることから、「株式の数」、「出資の数」、「出資の金額」、そして「株式の金額」の4つの組み合わせと読むことができるか、という点です。「又は」の接続詞がたすき掛けになっていますね。
審判所は、「又は」の接続詞が全ての組み合わせを意味することもあれば、ある特定の組み合わせを意味することもあり、いずれであるかは組織形態などの点を考慮した解釈により決定されるものであって、本件の場合は文言自体からして当然に全ての組み合わせを意味するものではないと。
今回、外国法人に該当するか否かは、外国法人の経営判断への内国法人の支配(影響力)をもって判断すべきであって、外国法人が株式会社である場合の「株式の金額」については、当該外国法人の経営判断への支配力(影響力)を示すものではなく、また「株式の券面額(額面金額)」、「株式の払込金額」等の何を意味するかは不明で不適当な組み合わせと判断し、原処分庁の処分は適法としております。
審判所の当然の判断だと思いますが、一方請求人の方は当初から「株式の金額」で要件を満たすと考えていたのか、それとも「株式の数」で満たさないことが後で分かったから後付けで「株式の金額」を持ち出したのかはちょっと興味がありますね。
税理士 三木孝夫