平成31年度税制改正 / 移転価格税制改正の概要

平成31年度税制改正で、BEPS報告書やOECD移転価格ガイドラインの改訂内容等を踏まえ、国内法における移転価格税制の見直しが行われました。

 適用開始時期

令和2年4月1日に開始する事業年度分の法人税及び令和3年分所得税から適用されます。

 主な内容

① 移転価格税制の対象となる無形資産の明確化
以前は対象となる無形資産の範囲が明確化されておりませんでしたが、今回の税制改正で「法人が有する資産のうち、有形資産及び金融資産(現金、預貯金、有価証券等)以外の資産で、独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って譲渡・貸付け等が行われるとした場合に対価の支払いが行われるべきもの」とされました。

② 独立企業間価格の算定方法の整備
独立企業間価格の算定方法(以下、「価格算定方法」)として、OECD移転価格ガイドラインにおいて比較対象取引が特定できない無形資産取引等に対する価格算定方法として有用性が認められているディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)が加えられます。これに伴い、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類の提出等がない場合の推定課税における価格算定方法に、国税当局の当該職員が国外関連取引のときに知り得る状態にあった情報を基にしてDCF法により算定した金額を独立企業間価格とする方法が加えられます。

③ 評価困難な無形資産の取引に係る価格調整措置の導入(所得相応性基準の導入)
評価が困難である無形資産の取引に対する独立企業間価格の算定基礎となる予測と結果に大きな相違が生じた場合には、税務署長は当該取引に係る最適な価格算定方法により算定した金額を独立企業間価格とみなして更正等をすることが可能となることから、たいへん大きな改正点だといえます。

④ 四分位法(Interquartile range)の導入
APA等の相互協議においては従来より四分位レンジが用いられてきましたが、課税のシチュエーションにおいては四分位レンジではなく、フルレンジが用いられてきました。今回の改正により、比較対象取引について差異調整の定量化が図れない場合に限定されるものの、四分位レンジを用いることが可能となりました。
従って、フルレンジの中に利益率がギリギリ入っているようなケースは、移転価格ポリシーの見直しが必要と思われます。

⑤ 移転価格税制に係る更正期間等の延長
現行の6年から7年に延長されました。

税理士 三木孝夫

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